研究概要 |
本年度は,前年度までに構築した演奏初心者の親が初学者の子どもと容易にピアノ連弾できるようにするシステム"Family Ensemble"の学習効果と使い勝手を向上させるために,以下の2点についての研究を実施した. 1)ピアノ演奏支援システムを構築する際,正しい音高列やリズムの手本を表示する機能が一般に必要になる.しかし,この手本表示は学習効果に及ぼす影響が大きく,提示方法によっては学習を阻害する可能性もあるため,慎重なデザインが不可欠である.そこで,現在の類似システムで最も多く採用されている「常時次の1音の手本を示す」提示手段に加え,「常時次の1音からフレーズの最後までの手本を示す」「演奏停止時のみ次の1音の手本を示す」「演奏停止時のみ停止箇所からフレーズ最後までの手本を示す」の,合計4種類の提示方法を比較した.この結果,次の1音のみでなく,フレーズの最後までのまとまりを提示した方が演奏学習上良い効果を得られる可能性が高いことが示唆された. 2)Family Ensembleシステムで使用する楽譜データを作成するには,メロディの音高列を数値的に入力する必要がある.しかしながら,楽器演奏学習の初心者にとって,あるメロディがどのような音高列で構成されているかを求めることは容易ではない.そこで,歌唱によってメロディを誰でも簡便かつ高精度に数値データとして入力可能とするツールを研究開発した.従来の鼻歌入力システムは,音の区切りを精度良く認識するために,利用者に特殊な歌唱方法を要求する.このため歌いづらいという問題があった.本研究では,歌唱と並行して行うリズムタッピングにより音の区切り情報を入力する手法を考案し,評価を行った.この結果,歌唱方法に依存せず,高精度に歌唱データを数値化できることを確認した. その他,本研究全体の総括を実施した.
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