本年度は、3年計画の第2年度として、以下の研究を行った。 (1)研究ドメインの絞込み 本研究ではメタ認知能力を使う対象ドメインとして、数学や物理などの問題解決プロセスに注目している。16年度に実施した先行研究調査から、この分野では問題解決の実施プロセスにおけるメタ認知獲得支援については複数の研究例があるが、最初の段階である問題理解プロセスについてはほとんど着手されていないことが判明した。また、対面授業のなかでメタ認知能力獲得支援を行う先行事例は複数あるが、この知見を学習支援システムに搭載した先行事例が少ないことが判明した。そこで、研究ドメインを「問題理解プロセス」とし、ここにおいてメタ認知能力獲得支援機能を「学習支援システム」で実装可能なものとすることに焦点を絞った。 (2)メタ認知能力獲得支援システムの試作開発 (1)をもとに、まず学習支援システムに実装可能なメタ認知能力獲得支援プロセスを考案した。従来研究や予備実験の結果から、「具体的に何を求めることか分かりますか?」「具体的に何をすればよいか分かりますか?」など7種類の問いかけを抽出した。この発問は、さまざまな問題に一様に適用可能な汎用のものが3種類、問題異存の文脈を含むものが4種類である。これらの発問への学習者の回答と合わせ、11段の分岐からなるプロセスを開発した。 (3)試作開発システムの適用評価 (2)のシステムの適用評価を行った。被験者は上智大学の学部生60名で、20分の実験を3週行った。これはメタ認知能力の内化が数十分の実験では期待できないためである。被験者にアンケートを実施したところ、5項目のうち「問題に内在する知識を意識できた」「自らの知識を自覚できた」など4項目で有意差が見られた。
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