研究課題/領域番号 |
16500636
|
研究機関 | 高岡短期大学 |
研究代表者 |
中村 滝雄 国立大学法人高岡短期大学, 産業造形学科, 教授 (60198215)
|
研究分担者 |
横田 勝 国立大学法人高岡短期大学, 産業造形学科, 教授 (10029225)
今淵 純子 国立大学法人高岡短期大学, 産業造形学科, 助手 (20310493)
|
キーワード | 種子鋏 / 伝統的鍛冶技術 / 製作工程 / 鍛造 / 鉄処理 |
研究概要 |
日本の刃物は極軟鋼と鋼の組み合わせによるものが多く、その接合方法も現在では貴重な技術となった。それは日本において貴重とされていた鉄の存在があったとは言え、強靭であり且つ柔軟な性質を生む構造、形態の微調整、刃の研ぎ出しなど多くのメリットがある。本研究の目的は伝統鍛冶技術で製作された種子鋏を取り上げ、その伝統的鍛冶技術を詳細に記録・保存するとともに、工学的な考察を加えることにある。本研究の対象である種子鋏製作者牧瀬氏は、それらの特徴を包括していた刀鍛冶と鉄砲鍛冶の伝統技術を伝承した職人である。16年度の調査は、(1)牧瀬氏の使用している鍛冶道具の調査・記録。(2)種子鋏の製作工程の内、特に鍛接・火造りなどの鍛造工程をデジタルビデオによってシャッタースピードの操作を加えた記録。(3)熱処理における温度管理を熱電対およびサーモトレイサーによる記録。(4)同様の製作方法を有する博多鋏の製作工程のデジタルビデオによる記録。これらの記録によって、職人の微妙な手技が伝統技術に裏付けられた技能であることが確認され、今まで職人同士でしか伝承できなかった鍛冶技術が解明できる手ごたえを得ることができた。例えば、鍛冶職人は「柿が熟した色」などの口伝で焼入れを行うタイミングをはかっていた。そのような親方のやり方を学び取り、自らの経験と勘によって行っていた工程の数値化を行うことができたことは一つの成果として挙げられる。また、昌國利器工匠博物館をはじめ産地の図書館や博物館を訪問し、時代背景や鋏に関する所蔵品や文献を視察・検索したことは、種子鋏の総合的な視点から考察する上で貴重な資料となった。 これらの調査結果にもとづく資料の考察を現在進めており、次年度に公表する予定である。
|