研究課題/領域番号 |
16500639
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研究機関 | 武蔵工業大学 |
研究代表者 |
平井 昭司 武蔵工業大学, 工学部, 教授 (30112981)
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研究分担者 |
岡田 往子 武蔵工業大学, 工学部, 講師 (60287860)
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キーワード | 鉄生産技法 / 微量元素 / 放射性核種 / 産地推定 / 中性子放射化分析法 / αスペクトロメトリー / 同位体比 / 放射平衡 |
研究概要 |
前近代の鉄つくりは、現代とは異なった製法によって行われ、その技術の解明と使用されてきた原料の産地推定が鉄文化を考える上で重要になっている。本研究では、この問題を解決するため、遺物試料中の微量元素等を定量して手法の確立を図ることを目的とした。 分析法には、中性子放射化分析法、αスペクトロメトリー、EPMA(電子線マイクプローブ分析法)及び燃焼赤外線吸収法を採用して鉄関連遺物(砂鉄、鉄鉱石、鉄津、鉄塊)を分析した。特に、αスペクトロメトリーにおいては^<238>Uと^<234>U及び^<232>Th、^<230>Thと^<228>Thの放射能を定量し、製鉄過程における同位体比の変化を調査した。EMPAでは、銹化した鉄器の銹化部と残存している金属部のミクロ範囲における元素濃度の分布を測定し、金属部から銹化部への元素の異動を調査した。さらに、燃焼赤外線吸収法では鉄の材質を特性つける炭素及び硫黄を定量すると共に、中性子放射化分析法でマクロ範囲の銹化部、金属部、滓部における微量多元素の濃度を定量し、各元素の挙動を調査した。 その結果、鳥打沢遺跡、蛭沢遺跡、大朝町門前遺跡、寺中遺跡の4製鉄遺跡から出土した砂鉄、鉄滓、炉壁粘土遺物中のU及びTh同位体放射能の関係から、U及びThが濃集する鉄滓や炉壁粘土中では、ウラン系列及びトリウム系列で放射平衡が成立していたが、砂鉄中のウラン系列^<234>U/^<230>Thの間で放射非平衡の関係になっていることが明らかとなった。このことは、原料となる砂鉄中の^<234>Uや^<230>Thの挙動が、製鉄過程において炉壁粘土中の^<234>Uや^<230>Thの影響を強く受けて、鉄滓中に反映されているものと考えられる。 また、鉄原料となる砂鉄あるいは鉄鉱石の産地推定に有力な指標元素となるTiとVあるいはAsとSbを定量した結果、江戸末期の佐賀県の反射炉において生産された鉄原料(鋳鉄)がこれら指標元素により、鉄鉱石由来であり、わが国で出産した鉄鉱石でないとことが推測できた。
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