研究課題/領域番号 |
16500641
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研究機関 | (財)元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 技師 (70223279)
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研究分担者 |
伊藤 健司 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00176330)
植田 直見 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
藤田 浩明 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 技師 (50344403)
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キーワード | PEG / 収縮 / 変形 / 寸法回復 / 保存処理 / 出土木製品 |
研究概要 |
1.収縮・変形試験片の作製 クリ、クヌギ、アカガシ、クスノキの出土材から30mm(接線方向)×30mm(放射方向)×30m(繊維方向)の立方体の試験片を作製した。ポリエチレングリコール(PEG)含浸法による保存処理をおこない、保存処理中の重量および寸法変化を調査しながら収縮試験片を作製した。その結果、同じ横断面から作製したクリの試験片であっても採取位置が違うと保存処理中の挙動が大きく異なっていることがわかった。試験片の重量減少は収縮に伴って起った。特に大型の出土木製遺物であればほとんど収縮しない部分と収縮・変形の激しい部分が共存することは充分予想されるため、回復実験には両者を用いておこなう必要があった。 2.回復実験 処理後のクリ、クヌギ、アカガシについて回復実験を試みた。回復方法として次の2つの方法をおこなった。(1)60℃の加熱水に浸漬する方法、(2)PEG80%水溶液に恒量になるまで浸漬し、その後同様に20%ずつ濃度を下げる方法である。 その結果、(1)加熱水に浸漬する方法では、アカガシで浸漬1日後に木口面の片面に細かいクラックが多数生じたが、重量および寸法は増加し、浸漬開始から約10日でほぼ元の寸法に回復した。また、クリ、クヌギでは保存処理中に生じたクラックのほかには新たなクラックはなく、約10日で形状回復した。アカガシは急激な膨張で細かいクラックを生じたと考えられることより、緩やかに回復させることが重要と考えられた。(2)の方法においてもPEG濃度を下げるごとに寸法は序々に回復し最終的に形状はほぼ回復した。
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