研究概要 |
中部日本と近畿三角地帯とを画する巨大逆断層系である「養老・桑名・四日市断層系」をテストフィールドに設定し、群列ボーリングコア解析に基づき地形・地層の変形構造を復元して断層イベント層準を検出する方法論的研究を推進した。とくに四日市断層の活動履歴の解明が進んだ。イベント層準の年代は地層の堆積速度(コアの堆積深度年代曲線)に準拠して決定し、断層活動間隔の規則性を明らかにした。養老断層系は西暦745年と1586年の大地震の震源断層の可能性が高いことから(須貝ほか,1999)、本研究では対象期間を過去1万年間に広げて、断層イベント数を増やすとともに、詳細なコア解析をもとにイベント層準指標となる物理・化学・生物的変動特性を探した。また地形層序学的手法により、断層上下変位量を推定し「固有地震モデル」の普遍性を吟味した。堆積速度が大きい場所での多数の14C年代値に基づく堆積曲線によって断層活動時期を決定することで、年代誤差を小さくできることが本研究の有利点である。地震動が引き起こす地盤変動(地辷り・崩壊・土石流・地盤液状化など)とそれを規定する地形・地質要因との関係を過去の事例を参考に調べ、地震をトリガーとした地盤災害に関する研究を行った。大規模山体崩壊による地形改変事例も取り上げ、論文を発表した。『地震動による土砂移動や地表変形から古地震の証拠を得る』視点と共通する。例えば地震をトリガーにした土砂移動が主となって山麓扇状地が成長することが分かりつつある。
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