逆断層系である養老断層系および深谷断層系を対象として、断層活動の過去の履歴を復元するとともに、断層活動によって沈降を繰り返してきた平野部の地下浅部構造をボーリング調査や地中レーダー探査によって明らかにした。その結果、以下の成果を得た。 (1)養老断層系を構成する養老断層・桑名断層・四日市断層は、745年天平地震および、1586年天正地震の震源断層であった可能性が高い。また、上記3断層は、完新世における活動回数が誤差の範囲内で一致している。以上からこれら3断層は同一の断層活動セグメントを構成しており、マグニチュード8クラスの大地震を約1000年間隔で繰り返してきたと推定される。 (2)養老断層の活動に伴い沈降してきた濃尾平野は、典型的な沖積低地の堆積構造を有しており、完新世のデルタ形成後は、河道・自然堤防・後輩湿地のセットの堆積地形が、側方ヘシフトしながら累重してきたことが判明した。こうした微地形セットの根の深さが液状化し易さに関与する可能性が指摘された。 (3)深谷断層系綾瀬川断層において、群列ボーリング調査と地中レーダー探査を実施し、同断層南部が数万年間隔で、後期更新世以降に2回活動した活断層であることを実証した。さらに平均上下変位速度は0.1m/千年、一回の上下変位量は4m程度に達することが明らかにされた。深谷断層系本体に関して、はじめて断層活動履歴のデータを得ることができた。既知の資料を総合すると、深谷断層系・綾瀬川断層は深谷断層系・深谷断層よりも活動度が低く、深谷断層系は、少なくとも2つの断層活動セグメントに分かれる可能性が高いと結論した。
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