研究概要 |
本研究では,首都圏における短時間強雨の発生と都市地表面状態との関係について解析し,以下の結果を得た。 1.首都圏における夏季強雨頻度分布の特徴として,都心北部,都心南部および京浜に強雨頻度の極大域が認められる。京浜の強雨域は,北西方から連なる強雨頻度極大帯の延長上に位置しており,ここを南東進してきた降水域による強雨と考えられる。一方,都心北部や都心南部では,その近傍で強雨域が短時間に発生・発達する傾向があり,都心域における特徴的な強雨の発現形態と考えられる。 2.強雨の発現頻度には顕著な局地性が認められ,東京都区部の西部(中野〜下北沢付近)と北部(板橋区南部)に極大があり,前者は東風時,後者は南風時に特に高頻度となる。これらの地域は新宿や池袋などの高層建築物群風下側に位置しており,建築物群が形成する大きな地表面粗度による下層風の収束が強雨発現の局地性に関わっていることが示唆される。 3.建築物形状を再現できる2.5m間隔地表面高度データ(DSM)を用いた天空率の算出方法を提示し,東京都区部全域について天空率を求めた。任意点における天空率の空間代表性は乏しく,都市ヒートアイランドと天空率との関係を考察するためには,天空率のスケールアップが必要である。1km四方の天空率ヒストグラムから得られた東京都区部の代表的な天空率は,0.5〜0.6(都心部),0.8〜0.95(周辺部),0.95〜1(東京湾岸・河川敷)である。 4.DSMを用いて東京都区部における空気力学的パラメータ(ゼロ面変位および空気力学的粗度)を算出し,風速の対数分布に基づいて地表面粗度に関係する水平・鉛直風速分布の評価を行った。新宿〜目黒付近や池袋付近などに大きな上昇流が現れ,上昇流域は風向によって変化する。この結果は上記2と整合し,強雨頻度の局地性は高層建築物群が形成する地表面粗度と強く関係すると考えられる。
|