経済的中枢管理機能を指標として、ロシアと中国の都市システムを分析することが本研究の目的である。申請者はこれまで同機能を指標として日本をはじめ、韓国、フィリピン、インド、タイ、フランス、イギリス、ドイツ、カナダ、ブラジル、アメリカ合衆国の都市システムを研究してきた。そこで得られた重要な知見は、一国の都市システムのあり様を決定しているのは政治体制であるということであった。具体的には、都市システムの中核となる都市が存在せず平板な構造の場合と首都が圧倒的な地位にあって、その国の都市システムの中核になっている場合とに分けられた。前者の代表はインドやアメリカ合衆国である。後者の代表は韓国やフランスであり、日本も含まれる。前者の国々の政治体制は連邦制であり、後者の国々はそうではない。 このような観点から今回のロシアと中国をみると、いずれも社会主義という政治体制を経験した。あるいはその中にある。このことが都市システムにいかなる影響を及ぼしているのかということを明らかにすることが研究の最大のポイントである。ロシアにおいては都市間結合は弱いとはいえ、モスクワの地位が断然高いものであったのに対して中国では都市間結合は同じく弱いうえに首都北京の地位はそれほど高いものではなかった。この差異は何に起因しているのだろうか。旧ソ連は連邦制であったが、現在はそうではない。一方、中国は現在も社会主義を標榜しているとはいえ市場経済システムを採用している。政治首都は北京だが、経済中心は上海であると言われている。このあり様はアメリカ合衆国を連想させるが、両国の政治体制は同じではない。ロシアと中国の都市システム、とくに中国の都市システムを規定している要因を明らかにすることが今後の課題である。
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