研究課題
本研究の目的は、第一に、途上国の実情に鑑み、日本で蓄積された研究成果を有効利用しつつ、観測およびシステム保守のコストを抑えながら、中国・上海において高密度自動観測システムを初めて構築することである。第二に、長期間にわたって37箇所で気象観測を実施して得られたデータに基づいて、上海におけるヒートアイランド(UHI : Urban Heat Island)の実態を解明することである。そして、これらの成果を用いてUHI緩和のための有効な上海の都市区画整備・開発計画を提案する。観測によると、上海の月平均気温の上昇が見られ、特に2005年においては、最高気温38℃を超える日数が10日以上、最高気温の最大値は39.8℃であり、世界的に見ても異常な高温化が顕著となっていることが確認された。また、2005年4月と5月にも真夏日が現れ(4月に6日、5月に5日)、市の中心部においては、真夏日が7月に28日で、8月に24日であった。さらに、日最高気温35℃を超える日数が7月に17日、8月に14日であり、日最低気温25℃を超える日数が7月に25日以上、8月に15日以上であった。上海では、風の弱い晴天夜間にUHIが年間を通してはっきり存在している。7月のUHI強度の最大値は4.3℃で、8月の場合には3.4℃であった。UHI強度は日没後急速に増加し、その後は同じような状態が日の出頃まで続くことが明らかになった。また、市の中心部にある公園緑地の暑熱緩和効果が明確にされた。7月の場合、住宅地内の公用緑地より公園緑地のUHI強度の最大値が約1.3℃低かった。さらに、夏季の日中においては、冷たい海風(東〜南東〜南)の進入のため、市の東部で高温域が緩和され、都心部と市の南西部が高温域になった。しかし、都心、市の東部とも海風の影響を受けているが、海風の風速が5.0m/s以上になっても、南西部での気温低下は認められず、明瞭なヒートアイランドが見られた。一方、陸風(南西〜西〜西北)の夜においては、市の東部を中心とする発達したヒートアイランドが見られた。
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2006年日本地理学会春季学術大会発表要旨集 No.69
ページ: 131
季刊地理学 Vol.58 No.3(印刷中)
Proceedings of the 6^<th> International Conference on Urban Climate (Goteborg, Sweden) (印刷中)