研究概要 |
本研究は、フィリピンの森林伐採地において特徴となっている草本植生(コゴン)に覆われた溜池流域と森林に覆われた溜池流域の水文特性を調査し明らかにすることで、持続可能で安定した農業経営に資することを目的としている。 本年度は、イピル・イピルを主とする林地内の水文特性とコゴンを主とする草地の水文特性を明らかにするため、新たに林地内に土壌水分プロファイラと表面流出観測測器を設置した。また、降水と流出、溜池水位の詳細な変動関係を知るために水位ロガーを溜池内に設置した。以下に本年度の調査内容及びその成果の一部を挙げる。 1.気候環境調査:本研究期間内に継続して行ってきたヴィラボアド集水域、ブーテッドツー集水域における雨量データが相当量蓄積され、流域間の降水量の違いが比較可能となった。 2.植生調査:現地の木本に含まれる植物珪酸体標本を作製し、土壌中のプラントオパールと比較可能になった。 3.土壌浸食調査:表面土壌に含まれる鉱物の風化度を調べることにより、相対的な土壌浸食の早さを調査した。斜面上の土壌中に含まれる鉱物の風化が小さいことから、量的な把握は行っていないものの草地面ではかなり大きな土壌流出が起こっていることが指摘され、適正な流域管理の為に今後量的な把握の必要性が示唆された。 4.人為インパクト及び水利用調査:地域住民の流域利用を草刈り,野焼き,薪炭利用,農業水利用の観点から調査した.本年度は、昨年度以来続いてきた世界的な石油価格の高騰の影響で、薪炭利用の為の伐採が各地で認められ、本研究対象流域に残されている数少ない木々も例外ではなかった。また、原因が明らかではないが、コゴン利用率(主に稲のバインディング利用)が減少していることが示唆された。
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