研究概要 |
中央アジアから東アジアにおける地表被覆および微地形、気象データ、水文データなどの変化と気候変動や水資源動態との関係を詳細に分析してその実態を把握することが本研究の目的である。 広域の分析として、人工衛星ADEOS-2/GLIおよびTerra/MODISデータを入手し、これら1の地形の歪みを除去する精密な幾何補正手法の開発と、これを適用した衛星データセット整備を実施した。次に、これを既存のデータセットと比較解析して、著しい地表被覆の変化地域を抽出した。この結果、閉塞湖とその周辺地域における顕著な変化が確認できた。 これら広域解析の結果に基づき、特に著しい変化が認められた中国西部のジュンガル盆地とゴビ砂漠において、水域、灌漑農地、流域上流部の雪氷域の経年変化を詳細に解析した。閉塞湖の水域に関しては、長期スケールの水位変動を記す湖周囲の微地形分布を解析するために、衛星データからそれらを抽出解析するアルゴリズムの開発と、これを実際に適用して微地形抽出を行った。これには最新の人工衛星ALOS/PRISMデータを適用した。この結果、長期スケールの緩やかな乾燥化傾向と、1900年代後半の急速な乾燥化、さらには2000年代の複雑化した変化を把握することができた。気象データ分析や現地調査から、それらは広域気候変動と水資源管理方法の変更という人為的作用の影響が表われたものであることが分かった。 また、気候変動の検討結果によれば,中央アジアでの温暖化のトレンドが顕著で,その兆候は20世紀前半から現れていたことが分かった。広域の水循環に関しては、過去110年間の降水量・蒸発散量,流出量の経年変化を河川流域を単位に比較検討した結果、1980年代以降の中緯度陸域において,降水量の減少と蒸発散量の増加に伴う流出率の低下が認められた。さらに、黄砂飛来観測データなどから乾燥化の影響を反映する黄砂飛来頻度の気候学的特徴の分析を試みた結果、頻度について周期的な要素が強いことが分かった。
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