研究概要 |
申請課題に基づき,平成17年度は干潟土壌において,我々が見出したタンパク質負荷によるフォスファターゼ活性誘導について,この活性効果が干潟土壌においてのみ発現される現象であるか否かについて明らかにすることに焦点化した研究を行った。具体的には,広島県竹原市を貫流する賀茂川の河口干潟と,上・中流域にあたる数地点間の土壌を対象に,フォスファターゼ活性誘導の差違,及び負荷されたタンパク質の加水分解過程について比較検討を行った。その結果,タンパク質負荷による著しい活性誘導効果は,河川上・中流域に比較し,干潟土壌において著しく高いことが明らかになった。さらに負荷されたタンパク質の加水分解パターンにおいて,活性誘導の高い河口干潟と上・中流域における土壌間には有意な差違が存在するという結果を得ることができた。この結果は,海洋・河川より有機物負荷の堆積する河口干潟には活発なタンパク質分解活性とそれにリンクしたフォスファターゼ活性誘導を担う特殊な微生物種の存在を示唆するものとなった。 この研究においては,タンパク質分解酵素の活性染色法を改良・応用し,採土した土壌に含まれる各タンパク質分解酵素の存在を,分子量と活性の程度から電気泳動的手法で分析できる方法の開発に成功した。これらの結果は,現在,2編の投稿論文として査読の段階にある。 特に本課題の遂行過程でなされた技術開発の成果としての,「土壌中のタンパク質分解酵素の分析法」は,電気泳動的には最も高感度タンパク質分析手法として用いられる銀染色法によっても把握できない微量の酵素量であっても,その酵素の活性を,電気泳動終了後のゲル上に酵素の存在を分離・分析できるものであり,土壌タンパク質分解酵素の分析は,国際的にも初めての成功例になると思われる。今後土壌微生物を対象とした環境科学研究の手法として多くの研究者に幅広く採用されることが期待されると思われる。
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