研究課題
基盤研究(C)
森林土壌の窒素飽和は、降雨などによる大気からの窒素化合物の沈着量が、森林における窒素の必要量を上回る状態が継続することにより引起される。本研究では、森林土壌の窒素飽和化に伴う新たな問題として、硝化・脱窒反応が活性化することによる地球温暖化ガスとしての亜酸化窒素(N_2O)の生成促進プロセスの存在を実証することならびにN_2Oの発生フラックスを定量的に把握することによって、窒素飽和が地球温暖化に与える影響を評価することを目的とした。N_2Oの測定には、濃縮器を備えた、Nr-ECD検出器付きのガスクロマトグラフを用いた。N_2Oのサンプリングに際して、密閉型のチャンバーと通気型の特性について検討した結果、通気型のチャンバーにおいて安定したフラックスを得ることができた。次に、窒素飽和土壌(富山市呉羽山)ならびに非窒素飽和土壌(富山市三の熊)に通気型チャンバーを設置し、N_2Oフラックスを測定した。両地点における渓流水中の硝酸イオン濃度は、呉羽山では160μmol/lと非常に高濃度であるのに対し、三の熊では9μmol/lと低い。2004年10月から2005年6月までのN_2Oフラックスは、窒素飽和の呉羽山土壌では平均2.42μg-N/m^2/hと、非窒素飽和土壌の0.21μg-N/m^2/hに比較し約11倍であった。また、渓流水中の硝酸イオン濃度がやや高い、富山県魚津市の松倉、富山市小羽においてフラックスを測定した結果とあわせると、渓流水中の硝酸イオン濃度とフラックスには強い相関があることが見出された。これらのことにより、窒素飽和がN_2O発生フラックスを促進することが実証できた。「酸性雨が温暖化の原因となり得る」という本研究で得られた成果は、チェコで開催された酸性雨国際会議ACID RAIN 2005で公表した。また、国内では土木学会環境工学研究フォーラムにて成果を発表した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
富山県立大学紀要 15巻
ページ: 123-128
エコテクノロジー研究 Vol.11 No.2
ページ: 17-21
土木学会環境工学研究論文集 42
ページ: 163-170
Bulletin of Toyama Prefectural University Vol.15
Journal of Ecotechnology Research Vol.11,No.1
Environmental Engineering Research Vol.42