本年度は、昨年度の野幌森林公園周辺地域住民意識アンケートに加えて、アライグマの侵入が確認されてはいるが、被害等がまだ地域住民には充分に知られてはいない地域として、北海道美幌町を対象として選挙人名簿からの無作為抽出により成人男女2000人にアンケート調査を実施し、417通の回答を得た。 美幌町ではアライグマの侵入情報が得られてはいるが件数は少なく、美幌町でのアライグマの野生化自体を知らない人も多く、77%の住民にはその存在が知られていない。一方で、アライグマが存在することについては、89%住民がアライグマの存在は問題であると考えていた。問題とする内容は、農業被害の率が高いが、続いて在来種との競合・在来種の捕食が意識されており、生態系保全の意識も高まりつつあることが予想された。 北海道における駆除事業の展開については、49%の住民のみに知られていた。しかし、駆除事業に対する賛同意識は強く、86%の住民がアライグマを駆除すべきと考えていた。駆除の理由としては農業被害が高く意識されているが、在来種の保護が最も高く意識されており、身近な状況には気付いていないが、外来種に対する問題意識は徐々に社会に普及しつつあることが予想された。美幌町では前年の野幌森林公園周辺地域での結果よりも生態系への意識は高かったが、これは地元の美幌博物館の積極的な広報活動が効果をあげているものと予想された。 さらに、アライグマ対策への合意形成に向けて、美幌博物館において町民向けのアライグマ問題講習会を開催した。自然環境への問題意識の高い住民が参加したと予想されることもあるが、参加者のほとんどがアライグマの存在を問題視しており、講習会後のアンケートでは、講習会の実施によってアライグマ問題をさらに強く認識するようになったものと判断された。特に、外来種問題を正しく理解することから生態系保全への意識が再確認された態度が強くうかがえ、情報を積極的に地域に還元し、現状を正しく理解することが対策への合意形成には有効と考えられた。なお、昨年の結果と同様に、一部の人は共存の在り方を模索しようとしていたが、このような意見も尊重しながら情報の提供を続け、対策への合意の方向を探る必要があるものと考える。
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