研究概要 |
本年度は、すでにゲノム全塩基配列が明らかになっている腸管出血性大腸菌O157:H7を対象株とし、プロテオーム解析法を主たる手段として,VBNC過程での特異的遺伝子やタンパク質を特定することを目指した。VBNC状態の細菌を得るための条件検討を行った。大腸菌O157をLB培地で37℃培養後、対数増殖中期で遠心集菌、洗浄後、滅菌水中4℃条件下で培養を行った結果、VBNC状態になることを確認した。培養1週間程度で10^7細胞/mlから10^3細胞/mlまでコロニー形成細胞数は減少し、その後1ヶ月の長期培養において、約10^2細胞/mlまで減少した。その培養期間、LIVE/DEADキットを用いで生菌数を計測した。その結果、初期接種細胞数(10^7細胞/ml)と変わらなかった。これより、VBNC状態に陥る条件を確立することができた。約1ヶ月のVBNC培養という長期間の実験スパンであるため、1〜2週間程度の実験となるよう、さらに検討する余地はあると思われる。 VBNC状態に陥る過程での発現タンパク質を特定するために、VBNC培養0日目、急激にコロニー形成数が減少した7日、さらに14日、30日においてVBNC菌体のサンプリングを行った。菌体を溶菌、タンパク質抽出後、SDS-PAGEを行い、各時期における発現タンパク質プロファイルの比較を行った。確認できるバンドのパターンはどの時期においてもほとんど変化は見られなかった。ただ、長期培養を行うにともない、低分子側のタンパク質バンドが薄くなった。次年度は、各培養時期のタンパク質について質量分析計を用いたタンパク質同定を行い、VBNC特異タンパク質の特定を行う。
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