研究概要 |
本研究は、腸管出血性大腸菌O157:H7を対象株とし、プロテオーム解析法を主たる手段として,VBNC過程での特異的遺伝子やタンパク質を特定することを目的とした。VBNC状態は、大腸菌O157をLB培地で37℃培養後、対数増殖中期で遠心集菌、洗浄後、滅菌水中4℃条件下で培養により得た。培養開始時コロニー形成数が10^7細胞/mlから56日後に約10^2細胞/mlまで減少した。培養期間、LIVE/DEADキットを用いた生菌数測定の結果、56日後も初期接種細胞数(10^7細胞/ml)と変わらなかった。VBNC状態での発現タンパク質を特定するために、VBNC培養0日目と56日目のVBNC菌体について、溶菌、タンパク質抽出後、SDS-PAGEを行い、発現タンパク質プロファイルの比較を行った。バンドのパターンにほとんど変化は見られなかった。2次元電気泳動も同時に行ったが、極端なスポットの変化は見られなかった。SDS-PAGEゲルを用いて質量分析計(LC/MS/MS)によるタンパク質同定を行った。0日目のみで同定されたタンパク質192種、56日目のみ274種、両培養日では497種が同定された。これら解析より、VBNC状態において制御タンパク質や膜タンパク質の発現が見られ、機能未知タンパク質も数種同定された。並行して大腸菌の全遺伝子破壊株コレクション(KOコレクション、約3,800株)を用いたVBNC関連遺伝子の探索を行った。実験系の構築の検討を行い、37℃、滅菌水中で初期コロニー形成数10^4細胞/mlから6日後に0細胞まで減少した方法を用いた。96穴プレートによる培養・操作を行い、これまで480株(5プレート分)を解析した。今までのところVBNC状態にならない変異株は確認されていない。
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