本研究の目的は、欧米とは異なる沿岸域資源環境利用を行っているアジアにおいて、事例調査から、地域共同体による「アジア型」沿岸資源管理(Community-Based Coastal Resource Management : CBCRM)の望ましい形、また、それを実現するための条件と課題を、自然・社会環境両面から明らかにすることである。 今年度は、昨年度に引き続き日本の地域共同体による沿岸資源管理について事例調査およびマレーシア国ペナン州の漁民による資源管理についての調査をおこなった。 2006年7月・8月・2007年3月には、北海道・厚岸町において、1980年代のカキ斃死をきっかけに青年漁業者たちが得た植樹活動の構想を、厚岸町が分収林条例を制定して制度的に支援し、さらに、漁業系統組織等へ波及した経緯、また、首都圏で活動する有機食品事業体・市民団体が活動と生産物販売の両面において支援していく過程について、聞き取り調査をおこなった。 また、2006年10月には、北海道サロマ湖において、1970年代以降のホタテ養殖業の展開および漁業協同組合の民主化の過程について、直接関与した方々から聞き取り調査をおこなった。 同年10月には、マレーシア国ペナン州にて、ペナン浅海漁民福利協会を対象に、マングローブ植林を含む資源保全プロジェクトについて聞き取り調査をおこなった。 上記事例調査の結果、CBCRMが発展する条件のひとつとして、環境保全的生産を営むことによって付加価値を高め水産物のグリーン購入を通して利益がもたらされるような、環境保全型生産が報われる制度の確立の必要性を認識した。
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