本研究の目的は、地域共同体による「アジア型」沿岸資源管理の望ましい形とそれを実現するための条件と課題を明らかにすることである。 平成16年度は、北海道厚岸町およびマレーシア共和国ペナン浅海漁民福利協会の資源管理活動について調査した。厚岸町においては青年漁業者たちが得た植樹活動の構想を厚岸町が制度的に支援し、さらに、漁業系統組織等へ波及、首都圏で活動する有機食品事業体・市民団体が活動と生産物販売の両面において支援した経緯がある。一方、トロール漁船の進入、エビ養殖の拡大による海岸の荒廃、河川からの汚染流入に対し、本漁民協会は自律的資源管理をめざして、精力的に活動を行っている。両者を比較し、政府機関による制度的支援の必要性を認識した。 平成17年度は、とくに日本の地域共同体による沿岸資源管理について事例調査をおこなった。高知県四万十市にて、無投薬養殖を営む養鰻業者とそれを扱う有機食品事業体について行った調査およびH18年3月に愛媛県で無農薬みかん栽培から始まった農業法人が真珠養殖業者やちりめん漁業者を含めて、海と山をひとつの環境系として保全型生産をおこなうとりくみについておこなった調査から、アジアにおける沿岸域保全のために一次産業生産者間、消費者との連携の重要性を認識した。 平成18年度は、北海道漁民による沿岸資源管理およびマレーシア国ペナン州漁民による資源管理について再調査した。サロマ湖において、1970年代以降のホタテ養殖業の展開および漁業協同組合の民主化の過程について聞き取り調査をおこなった。こうした運動の現代の途上国漁村への適用の可能性を認識した。 こうした調査の結果、CBCRMが発展する条件のひとつとして、環境保全的生産を営むことによって付加価値を高め利益がもたらされるような公的・私的支援、その制度化の必要性を認識した。
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