研究課題
新潟県新発田市(旧北蒲原郡加治川村)に設定したスギ人工林長期動態モニタリングサイトにおいて、年間を通じた成分沈着量と渓流水の観測データを得ることができた。1.斜面方位別(西北西、南西、北東)、斜面位置別(上部、中部、下部)にプロットを設定し、林内雨と林外雨を観測した。流域への年間成分沈着量(当量ベース)では、Cl^-とNa^+が圧倒的に多く、次いでSo_4^<2->、Mg^<2+>、Ca^<2+>であり、K^+、NO_3^-、NH_4^+は少なかった。流域への成分沈着量は冬季に急激に増加し、北西・西北西からの風量との間に強い正の相関が認められた。また、冬季は海塩由来成分の割合が80%以上に達した。各斜面方位とも斜面上部プロットで、とくにNO_3^-が冬季に成分沈着量が多かった。一方、斜面中部以下、とくに下部においては、方位の違いによる成分沈着量には有意差が認められなかった。このことから流域への成分沈着量の評価には、斜面方位と斜面位置を考慮することが重要である。2.渓流水の調査では、平水時の定期観測と増水時の連続観測を併用した。成分ごとに流量と濃度の関係が異なるため、本研究では区間代表法とL-Q法を併用して渓流水による年間成分流出量を推定した。流出量(当量ベース)の多い成分はCl^-、Na^+、Ca^<2+>であり、次いでMg^<2+>、SO_4^<2->、NO_3^-、K^+の順になっていた。本流域での年間物質収支(林内雨による沈着量と渓流からの流出量の収支)を推定したところ、Na^+、Cl^-、SO_4^<2->は比較的釣り合っていた。しかし、Ca^<2+>は流出量が沈着量の約4倍、Mg^<2+>は約2倍であり、土壌または母岩の風化によって多くが溶出しており、酸性降下物の流域への影響の可能性が示唆された。また、NO_3^-は沈着量と流出量が同量で、NH_4^+として沈着量が多少あるためにNの総量では流出量が沈着量を下回っているものの、窒素飽和の状態に近づいている可能性が示唆された。
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Bulletin of Glaciological Research 23
ページ: 1-12
7^<th> International Conference on Acid Deposition, Conference Abstract (Prague, Czech Republic)
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