研究課題
1.新潟県新発田市に設定したスギ人工林の試験流域内で、土壌の酸中和能(ANC)を交換性塩基と炭酸塩による中和能(ANCc)と、SO_4^<2->の吸着による中和能(ANCa)の和で評価した。ANCcは土壌表層部で高く、下層で急低下していたが、ANCaは深さによる変化が認められなかった。ANCcには流域内の調査地点間で大きな差があり、これによってANC全体の傾向がほぼ規定されていた。ANCの消費に影響を与えると考えられる降水によるH^+負荷量とANCとの関係は認められなかった。しかし、土壌のA層の厚さとANCcの間には比較的強い相関関係が認められた。本調査地で最も高いANCを示した所でも、褐色森林土におけるANCの全国平均値(既報)の半分程度であった。これは、本調査地の母岩が酸性岩であること、斜面が急峻で土壌中の成分が流亡しやすいこと、冬季の季節風による大陸方面からのH^+負荷量が多いことなどが関係していると考えられた。今回の結果から、流域内の土壌の酸中和能には採取地点や深さによって差があり、流域全体で土壌の酸中和能を評価するには、できるだけ多くの地形条件の場所で調査する必要があると考えられた。2.新潟県内の過去38年間の公共用水域水質調査データから、人為的影響が比較的小さいと考えられる34ヶ所の採水地点(BOD濃度1.0mg/l以下)を選び、pHの経年変化を解析した。その結果、9地点で有意な経年変化が見られ、うち7地点が上昇傾向を、2地点が低下傾向を示していた。pHが上昇傾向を示した地点の多くは河川下流域に位置していた。一方、pHが低下傾向を示した地点は人為的影響が少ない河川上流域に位置し、花崗岩や花崗閃緑岩などの酸性岩が主に分布していた。さらに、標高の高い地域は降水量が多いためにH^+負荷量が多く、そのため、これらの河川でのpHの低下傾向には酸性降下物の長期的影響の可能性が考えられた。
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The 6th Conference of East Asia and Pacific Regional Network of ILTER
ページ: 40
第53回日本生態学会大会講演要旨集
ページ: 268
第47回大気環境学会年会講演要旨集 (CD-ROM版)