研究課題/領域番号 |
16510027
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
石原 陽子 久留米大学, 医学部, 教授 (50203021)
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研究分担者 |
萩原 啓美 横浜桐蔭大学, 医用工学部, 教授 (90189465)
小久保 博樹 国立遺伝研究所, 助手 (10270480)
富田 幸子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40231451)
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キーワード | ナノ粒子 / 粒子毒性 / DNAプロファイル / サイトカイン / リスク評価 / 健康影響 / ナノテクノロジー / 微小粒子 |
研究概要 |
環境で問題となるナノ粒子関連の文献調査とナノ粒子の健康影響評価を行う際に最適な指標を探索する目的で曝露実験を行った。(1)文献レビューは、主に大気中及び職域で問題となる鉱物、化学物質、新規開発のナノ粒子の、in vivo, in vitro研究について、PubMedなどで検索した。その結果、主に行われている毒性試験は、培養細胞を用いたin vitro実験では細胞増殖能(DNA分析を含む)、細胞死(アポトーシス、ネクローシスの検討)、変異性試験など、in vivo実験では経口投与や、静注投与による体内動態の検討、気管内投与や曝露による肺での炎症、肺線維化の検討、心機能への影響などであり、ナノ粒子のリスク評価手法は未だ確立されていないことが明確化された。(2)大気中濃縮微小粒子状物質(<粒経2.5μmナノ粒子を含む)を0.403-0.792mg/m^3,4時間/日、3日間曝露を行い、加齢ラットの心肺組織を用いて、DNAマイクロアレイチップでDNAプロファイルについて分析した。分析対象は、これまでの研究からナノ粒子や微小粒子との関連性が示唆されている、炎症性サイトカイン・ケモカイン、血液凝固関連物質、血圧関連物質、心疾患関連の項目とした。その結果、特異的に発現の増減を認めた物質は、肺では炎症性サイトカインである1L-1βの発現上昇を、血圧関連ではアンジオテンシノーゲンの発現上昇とtype IIアンジオテンシン受容体の発現低下を認めた。心組織では、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の発現低下を認めたが、BNPは明確な変動を示さなかった。テレメトリーシステムにより測定した心拍数は、曝露群で非曝露時間帯にやや高い傾向を示したが、血圧、体温には明確な影響を認めなかった。これらの結果は、金属、ディーゼル粒子などのナノ粒子を含む大気中微小粒子状物質の曝露が、心血管系に影響を与えていること可能性を示すと共に、抽出された指標が生理的指標よりもより鋭敏な健康影響指標になりえる可能性を示していた。
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