研究概要 |
1)ストレス蛋白のクローニング:Hsp70及び、hsc70のクローニングを完成し、その配列を用いた特異的な定量PCRシステムを確立し、野外より採取したユスリカ、及び温度ショックによるそれら遺伝子発現の経時変化を検出した。Hsp70のmRNAは、33℃において1時間後には数十倍の発現量を示し、16時間後にはコントロールレベルまで低下した。一方、hsc70の発現に関しては温度によらず一定であった。 2)ストレス蛋白の各種化学物質への応答性:化学物質として、カドミウム、銅、有機リン系殺虫剤ethofenprox、合成ピレスロイド系殺虫剤fenitrothionにおいて濃度依存性、時間依存性を検討した結果、ppmオーダーの曝露において、カドミウム、銅は6-8時間後、ppbオーダーの殺虫剤曝露においては2-4時間後にhsp70の発現がピークとなり、化学物質により,応答性が異なることが示唆された。Hsc70の発現はカドミウム、ethofenprox曝露により24時間後に1.4-2.4倍となり、長期的な曝露により変動することがわかった。 3)ユスリカを用いた化学物質評価法:OECDのテストガイドラインTG218に沿った評価法と、遺伝子発現による評価を比較検討する目的で、TG218評価法の改良を共同研究者と共に行った。銅については、底質に添加し、上層水における化学物質濃度を日を追って計測した結果、経時変化は認められたが、それは10%以内であった。銅に関しては4ppm以上の濃度で、成長阻害に起因すると考えられる羽化の遅延が認められた。 4)化学物質依存性の新規因子の検索:化学物質に応答した数種の遺伝子断片から、その全長をクローニングした。現在、2種の新規因子がクローニングされており、これらの因子の発現を鋭敏に検出するため、定量PCR法の確立を行った。
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