1)ユスリカのストレス蛋白質hsp70、構成発現型hsc70: ユスリカにおいて、これら基本的なストレス因子のクローニング、シークエンスを行い、相同性解析と、それらの温度感受性より、遺伝子レベルの応答桂を確認した。野外のユスリカにおけるhsp70遺伝子の発現は、殺虫剤の散布時期に高い傾向がみられた。さらに短期的な曝露における応答性解析より、これらの因子は多種の化学物質によるストレスに応答することを確認した。今後、ELISA法などによる簡便な検出システムの開発が急務である。 2)ストレス蛋白の各種化学物質への応答性: 上記のストレス応答性因子、及び新規の殺虫剤応答性因子について、スクリーニングを行い、化学物質応答性を検討した結果、銅、カドミウムなどの重金属と、Ethofenprox、Fenitrothionなどの殺虫剤等、試験したいくつかの化学物質に対して、それぞれ固有の反応性を示すことが明らかとなった。このことより、多種の化学物質が含まれる野外環境においても、その発現パターンの解析を行うことにより、含まれる化学物質の種類を予憩できる可能性が示唆された。総体としてのストレス検出は、環境アセスメントにおいては重要な妻素であり、このシステムは有用であると考えられる。 3)ユスリカを用いた迅速な化学物質評価法: さらに、OECDのテストガイドラインTG218に準拠し、上記の遺伝子発現を用いた検出法を適用したところ、通常曝露期間の4週間を8日間に縮めても化学物質の影響を検出できる可能性を示し、化学物質の影響を迅速に評価できる系であると考えられる。 4)化学物質依存性の新規因子の検索: 化学物質応答性のストレス感受性因子について、新規に遺伝子検出法を開発中であり、これらの遺伝子の組み合わせにより、さらに精度の高い解析を行うことが可能である。
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