研究概要 |
小児のX線医学診断,特に,高線量ゆえに健康への影響が懸念されるX線CT検査による小児の被ばく実態を調査・解明するために,極めて簡便に人体のいろいろな組織・臓器の被ばく線量を測定できるように,小児用人体ファントムの種々の組織・臓器位置に組み込んだ多数の能動型X線センサーからコンピュータによりデータを取得して,臓器ごとの被ばく線量,並びに実効線量を計算する,小児用臓器線量計測システムの開発を目的として研究を実施し,以下の成果を得た。 1.球状シリコンフォトダイオードを使用して開発した,非常に小型で感度の方向依存性が無い優れた特性を有するX線用線量計32個を,体重20kg,身長115cmの標準的な日本人6才児を模した小児人体ファントム内の,実効線量計算に必要な種々の組織・臓器位置に装着した,臓器線量計測体系を作製した。また,X線照射による各線量計からの微弱電流を吸収線量に比例した電圧信号に変換するための電子回路を作製するとともに,この信号をAD変換器を通してコンピュータに取り込み,基準電離箱を用いて校正された生体軟組織の吸収線量値に変換し,臓器線量並びに実効線量を計算するためのコンピュータプログラムを作成して,システムを完成させた。 2.本システムを使用し,現在,医療の現場で使われている代表的なメーカー数社の,最新型マルチスライスCTスキャナによる小児の腹部,胸部,頭部の種々の検査において,日常的に使われている検査プロトコールにより組織・臓器の吸収線量を測定し,それぞれの検査での臓器線量,並びに実効線量データを取得して,小児のX線CT検査による被ばく実態を解明するための大量のデータを取得するとともに,最近のCT装置に組み込まれている被ばく線量抑制機構の有効性と管電流変調機構の臓器線量低減に対する効果の程度を明らかにした。
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