(1)ゲノムがコンパクトで遺伝学的解析には有利なカタユウレイボヤであるが、遺伝子修復酵素については未だ研究の報告は無い。私たちはまずカタユウレイボヤのAPエンドヌクレアーゼ(CiAPE)をcDNAライブラリーよりクローニングして、酵素を精製し、そのAPエンドヌクレアーゼ活性に関して、性質を調べた。CiAPEのcDNA塩基配列は936塩基対で、311個のアミノ酸をコードし、その分子量は約34KDaである。この酵素はテトラヒドロフランを含む二重鎖オリゴヌクレオチドを効率よく切断した。この活性についてはMg^<++>を必要とした。またエキソヌクレアーゼIIIを欠損した大腸菌株BW9093をCiAPEのcDNAを組み込んだプラスミドで形質転換させ、菌内でCiAPE発現させたところ、その変異株の過酸化水素感受性が回復した。(2)Ogg1はグアニンの酸化的損傷である8-オキソグアニンを認識し、DNAから除去するDNAグリコシラーゼである。ホヤではじめてOgg1蛋白質のホモログ(CiOgg1)を同定し、CiOgg1蛋白質のホヤの組織での分布について調べ、精巣でCiOgg1が高いレベルで発現する結果を得た。さらに、CiOgg1の発現を抑制させると発生ができなくなることが観察された。(3)本研究では、APサイトを修復するshort-patch repairとlong-patch repairの鋳型鎖塩基配列に対するfidelityを比較するための研究を行った。正常なG/Cに比べて約10倍の突然変異頻度を示した。short-patch repair、long-patch repairともに0.1%で同じ程度の突然変異頻度であった。APサイト、RAPサイトともにその向かい側のGの欠失に伴う-1のフレームシフト変異がほとんどであった。(4)細胞のcrude extractでの5-foUに対するDNAグリコシラーゼの活性の生化学的な検索から、これらの酵素の他にDNA損傷を認識してそれらをDNAから除去する活性が見いだされている。本研究では、酸化的塩基損傷の修復に関わる新規のDNAグリコシラーゼを同定し、それらの構造と機能を解析した。
|