研究概要 |
甲状腺乳頭がんについてDNA修復機構の関連に注目して昨年度に引き続き検討した。 1.ATM,XRCC1,XRCC3,MTF-1遺伝子のSNP解析 ATM多型:甲状腺乳頭がんにおいてATMの多型を検討した。ATMは、p53の構造や活性の重要な制御因子の一つである。 (1)エクソン39,G5557A多型:(1)放射線誘発の小児甲状腺乳頭がんは、放射線誘発の成人甲状腺乳頭がんと比べ、Aアレルが優位に増加していた。(2)放射線誘発の成人甲状腺乳頭がんは、コントロールと比べて優位にAアレルが減少していた。(3)自然発症の成人甲状腺乳頭がんは、コントロールと比べて優位にAアレルが減少していた。 (2)イントロン22多型:IVS22-77C/Tについて解析したがそれぞれのグループで優位な差はなかった。 (3)イントロン48多型:IVS48+238C/Gについて解析したがそれぞれのグループで優位な差はなかった。 XRCC1多型:XRCC1エクソン9 Arg280His多型とXRCC1エクソン10 Arg399Gln多型を検討したがそれぞれのグループで優位な差はなかった。 XRCC3多型:XRCC3 Thr241Met多型:放射線誘発の小児甲状腺乳頭がんはコントロールと比べて優位にMetアレルが増加していた。 MTF-1多型:検討中である。 2.甲状腺がん細胞とDNA-PK活性:ヒト甲状腺癌細胞でDNA-PK活性の差がみられたので、6種の甲状腺癌由来細胞(ARO、ERO、WRO、TPC-1、KTC-1、KTC-2)のDNA-PK複合体蛋白質(Ku70、Ku80、DNA-PKcs)の発現とDNA-PK活性の関係を調べた。この結果、DNA-PKcsのみがDNA-PK活性と正の相関を示した。甲状腺癌細胞のDNA-PK活性はDNA-PKcsの発現量に依存している。
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