研究概要 |
近年、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争などの地域紛争において、劣化ウラン弾が多量に使用されており、大きな国際問題となっている。ウランは、プルトニウムと同様、放射線の影響とともに、その化学毒性の強さについても昔から知られているが、その毒性発現の機構はよくわかっていない。劣化ウランの化学毒性発現機構を解明することは、地域紛争の被害住民の健康を取り戻すための重要な基礎を築くことができる一方で、原子力の利用を進める過程で生じる環境整備に関わる多くの課題を解決することにもつながると考えられる。これまでの研究で、ウランが過酸化水素と反応し、ヒドロキシラジカルを発生することを見出しているが、その反応機構は明確ではなかった。本年度の研究で、ウラン(VI)が過酸化水素によりウラン(V)に還元されるが、不均化反応を経ずに、フェントン型反応により、ヒドロキシラジカルを生成し、ウラン(VI)に戻るプロセスで説明できることを明らかにした。また、該系にアミノ酸が共存すると特異なヒドロキシルラジカル消去作用を示すこともわかった。これらの成果は、学術雑誌:Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, Vol.260,13-18(2004);Water Research, Vol.38,2859-2864(2004);Neurochemical Research, Vol.29,1695-1701(2004);Brain Research,1025:29-34(2004)に発表するとともに、Asia-Pacific EPR/ESR Symposium 2004(APES'04)(Nov.22-25,2004,Bangalore, India);日本化学会第84春季年会(西宮,2004年3月);第54回錯体化学討論会(熊本,2004年9月);第43回電子スピンサイエンス学会年会(東京,2004年11月);第1回 抗酸化活性評価に向けたバイオラジカル研究会(京都,2004年12月)において学会報告した。
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