研究概要 |
近年、湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争などの地域紛争において、劣化ウラン弾が多量に使用されており、大きな国際問題となっている。ウランは、プルトニウムと同様、放射線の影響とともに、その化学毒性の強さについても昔から知られているが、その毒性発現の機構はよくわかっていない。劣化ウランの化学毒性発現機構を解明することは、地域紛争の被害住民の健康を取り戻すための重要な基礎を築くことができる一方で、原子力の利用を進める過程で生じる環境整備に関わる多くの課題を解決することにもつながると考えられる。昨年度までの研究で、ウラン一過酸化水素系の反応機構、ウラン(VI)一過酸化水素系に及ぼす糖、アミノ酸、ポリフェノールなどの生体系物質の影響について明らかにした。本年度の研究で、新規スピンとラップ剤の反応特性、性酸素ラジカル消去反応の速度論、抗酸化物質のウラン一過酸化水素系における脂溶性抗酸化物質の作用特性について解析した。また、フローインジェクションシステムによる速度論解析を試みた。さらに、ウラン一過酸化水素系にカテキン、タンニンなどの抗酸化物質が共存する場合のプラスミドDNA切断活性を調べた。併せて、マイクロダイアリーシス法によるラット脳内の活性酸素消去についても解析をおこなった。これらの成果は、学術雑誌:Journal of Applied Polymer Science, Vol.102,5372-5377(2006);ExperimentalBrain Research, Vol.169,117-121(2006);Neuroscience Research, Vol.30,1117-1121(2007);Neuroscience Letters, Vol.417,46-49(2007);Jurnal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry, Vol.272,251-255(2007)に発表するとともに、日本化学会第86春季年会(千葉)、同第87春季年会(大阪)、第10回ESRフォーラム研究会、第45回電子スピンサイエンス学会(京都)において学会報告した。
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