本研究は酸化ストレス耐性獲得に関与する遺伝子を新たに見つけることを目的として、過酸化水素耐性細胞で高発現している遺伝子を検索し、その遺伝子が耐性獲得に関与しているかを明らかにするとともに、その耐性獲得メカニズムを明らかにしようとするものである。これまでマイクロアレイを用い、親株であるHL-60細胞と比較して過酸化水素に高耐性を有するHP50細胞、HP100細胞で3倍以上高発現している遺伝子をそれぞれ178個、240個検出している。これらのうち、両細胞で高発現していた遺伝子(98個)を中心に、興味ある遺伝子85個を選出し、リアルタイムPCRを用いHP50細胞およびHP100細胞で本当に高発現しているかの検討を行った。その結果、6遺伝子は発現量が低く検出できなかったが、残りの検出された79遺伝子のうち44遺伝子が少なくともどちらか一方の細胞で2倍以上高発現していた。さらに、これら44遺伝子が酸化ストレス(H_2O_2、AAPH、DEM)により誘導されるか否かを、HeLa細胞、HepG2細胞、HL-60細胞を用い検討したところ、15の遺伝子がいずれかの細胞、酸化条件で2倍以上誘導された(egr-1、ある種のzinc finger protein、ras homolog gene family、機能未知遺伝子など)。 現在、これらの遺伝子が細胞での酸化ストレス耐性獲得に関与するかを明らかにするため、遺伝子導入実験用の発現ベクターの構築を進めている。
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