2004年8月末までにGPS付携帯式シンチレーション・スペクトロメータを特別注文して作成し、10月初めに動作試験を兼ねて、羽田-千歳間の国内線で環境放射線の測定に使用した。その結果は良好で、GPSによる位置情報も含め、満足のいくものであった。 2004年10月〜11月にかけての約3週間、GPS付携帯式シンチレーション・スペクトロメータを使ってエベレストおよび周辺地域の環境放射線の測定を実施した。せっかくの機会でもあるので、国際線の往路の成田-バンコク、バンコク-カトマンズ、復路のバンコク-成田について、宇宙線電離成分の測定を実施した。ただし、窓際の座席ではなかったため、GPSアンテナは使用できなかった。 ネパール国内では、カントマンズ-ルクラ間の国内線の往路と復路における宇宙線電離成分の測定を実施した。また、ルクラ(標高2840m)からは徒歩でパクディン(同2610m)、ナムチェバザール(同3440m)、タンボチェ(同3860m)、ディンボチェ(同4410m)、ロブチェ(同4910m)、ゴラクシェプ(同5140m)、カラパタール(同5545m)まで環境放射線の連続測定を行った。環境放射線としては、(1)宇宙線電離成分、(2)大地放射線、(3)大地放射線の構成成分であるウラン系列、(4)同トリウム系列、(5)同カリウム40の、空気吸収線量率をそれぞれ測定・解析した。さらに、徒歩でカラパタール(標高5545m)からゴラクシェプ(同5140m)、ロブチェ(同4910m)、ペリチェ(同4240m)、テシンガ(同3480m)、モンジョ(同2840m)、ルクラ(同2840m)まで連続測定を行った。 測定結果は大変に満足のいくもので、世界で初めてネパール国内におけるエベレストおよび周辺地域の環境放射線の貴重な実測データ得られたといえる。
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