研究概要 |
本研究は、感受性の高い周産期のダイオキシン類(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin:TCDD)曝露が新生仔におけるレチノイド代謝におよぼす撹乱作用の実態を解明する目的で行った。その結果、(1)周産期のダイオキシン類曝露により新生仔の肝臓レチノイド含量は有意に低下した。(2)Aryl hydrocarbon receptor(AhR)遺伝子欠損マウスおよびTransthyretin(TTR)遺伝子欠損マウスを用いて検討した結果、TCDDによる肝臓中レチノイド代謝への影響はAryl hydrocarbon receptor(AhR)に依存して起こる現象で、Transthyretin(TTR)は殆ど関与しないことが分かった。(3)Cross-fostering実験により、母体TCDD曝露による仔のレチノイド代謝への影響は、胎盤経由ではなく、授乳を介して起こることが明らかになった。 AhR遺伝子のヘテロ型(AhR+/-)マウス妊娠12日目に10μg/kg b.w.TCDDを径口的に単回投与した場合、仔マウスの生後21日目で肝臓レチノイドは有意に低下したのに対し、AhR遺伝子欠損(AhR-/-)マウスではTCDDによる影響は全く認められなかった。一方、TTR欠損マウス(TTR-/-)および野生型マウス(TTR+/+マウス:12週齢)に10μg/kg b.w.TCDDを経口投与した7日目において、TTR+/+およびTTR-/-マウスともに肝臓中レチノイド量は低下した。さらに周産期のTCDD曝露による仔のレチノイド代謝の撹乱作用が、胎盤経由によるものか、あるいは授乳経由によるものかを調べる目的で、妊娠ラット15日目にTCDD(1μg/kg b.w.)を一回経口投与して、クロスフォスタリング法で検討したところ、授乳曝露群のみで肝臓レチノイド量が有意に減少した。
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