地上のあらゆる生命は環境的酸化ストレスである紫外線や低線量放射線に曝されている。人類がこれらの酸化ストレスから身を守るためには、ストレス応答因子及び制御因子の研究が急務である。そこで本研究では、環境レベルの酸化ストレスに対する細胞応答を網羅的に調べるため、低線量放射線照射によるストレス応答タンパクの誘導に関してプロテオーム解析を行い、新規ストレス心答因子の探索と翻訳後修飾について検討することを目的として研究を行っている。 本年度は、正常グリア細胞(アストロサイト)を用いて、低線量放射線によるタンパク発現変化について網羅的に解析した。具体的には、アストロサイトに0.1GyのX線を照射後、一定時間後に細胞からタンパク質を抽出し、一次元目は等電点電気泳動、二次元目はSDS-PAGEを行い、タンパクの二次元電気泳動を行った。ゲルは銀染色、あるいは蛍光染色を行い、PDQuest(Bio-Rad)の解析ソフトを用いてスポットの発現変動について解析した。また、リン酸化タンパクを特異的に染色するProQ-Diamondを用いてゲルを染色し、低線量放射線によるタンパクのリン酸化についても解析を行った。タンパクスポットの同定は、スポットを切り出した後、トリプシン消化し、MALDI-TOF質量分析によりペプチドマスフィンガープリンティングを得た。Webサイトを利用してSwissProtなどのデータベースを検索することにより、スポットの同定を行った。 その結果、若齢ラットのアストロサイトに0.1GyのX線を照射することにより、タンパク発現が増加するスポットを発見した。また、リン酸化タンパクの解析から、0.1Gy X線の照射により、β-actinがリン酸化されることが明らかになった。現在、0.1Gy照射により発現増加するスポットの同定とストレス応答における意味について検討している。
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