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地上のあらゆる生命は環境的酸化ストレスである紫外線や低線量放射線に曝されている。人類がこれらの酸化ストレスから身を守るためには、抗酸化剤や放射線防護剤の研究と平行して、内在性の防御機構であるストレス応答因子及びその制御因子の研究が急務である。そこで本研究では、環境レベルの酸化ストレスに対する細胞応答を網羅的に調べるため、低線量放射線照射によるストレス応答タンパクの誘導に関してプロテオーム解析を行い、新規ストレス応答因子の探索と翻訳後修飾について検討することを目的として研究を行っている。
本年度は、前年度に引き続き正常グリア細胞(アストロサイト)を用いて、低線量放射線によるタンパク発現変化とタンパクリン酸化について解析した。若齢ラットの細胞で発見された、0.1Gy照射後3時間に一過性に発現の増加するタンパクスポットについて、加齢の影響を検討した。その結果、老齢ラット(24月齢)から培養したアストロサイトでは低線量照射による発現変動は起きないことが明らかになった。また、0.1Gy照射によりリン酸化及び脱リン酸化されることが明らかになったβアクチンについて、加齢の影響を検討した。その結果、低線量照射によるリン酸化・脱リン酸化に加齢の影響は認められなかった。このため、加齢により応答能が低下する適応応答には、βアクチンのリン酸化・脱リン酸化よりもむしろ、一過性に発現の増加するタンパクスポットが関与している可能性が示唆された。そこで、このスポットの同定を試みた。MALDI-TOF質量分析を用いたMS/MS解析を行い、elongation factor2のフラグメントであると同定した。現在、elongation factor2のフラグメントが低線量放射線照射により一過性に増加する意味について検討している。
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