研究概要 |
本研究の目的は,沿岸海域(閉鎖性内湾)における水質浄化,底質改善および藻場(磯焼け対策)の保全と修復である.そのため,自然環境を保全するための炭素繊維,製鋼スラグ等の素材の有用性を解明するとともに,沿岸海域へのそれらの有効な利用方法を明らかにすることである. 本年度においては,駿河湾の久連地先におけるアマモ場の維持機構,鉄鋼スラグの覆砂材としての持続性,海水浄化船を用いた富栄養海域からのリン酸塩の削減,清水港の貯木場および佐鳴湖をモデルとしての環境修復に必要なバックグラウンド観測などである.その結果,以下の事柄が明らかになりつつある. 1.炭素繊維を用いた人工藻場は,魚類群集からみると天然藻場修復のパイロットとしての機能を十分に備えていることが分かってきた. 2.塊状の製鋼スラグは,その間隙が目詰まりせず,生物生息空間を形成するとともに,底泥および沈降粒子に由来する硫化水素の発生を抑制することが明らかとなってきた. 3.富栄養海域からのリンの除去について,鉄鋼スラグ表面に鉄被膜を形成させることにより検討を行った.その結果,清水港では海水からリンを効率的に除去できることが見出されたが,佐鳴湖のようなpH値が9以上の水域では効果が悪いことが分かった.この問題については,平成18年度でさらに検討する. 4.清水港および佐鳴湖の懸濁粒子,沈降粒子および堆積物中の化学成分の測定を現在行なっており,清水港についてはASTMに論文を投稿し受理された.また,佐鳴湖の湖心堆積物中のCu, Zn, CdおよびPb濃度は,表層約25cmとそれ以下では数倍の濃度差が見出された. 2005年度の投稿論文(受理)および学会発表数は,それぞれ3および14である.
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