研究概要 |
高速列車がトンネルに突入するとトンネル内の空気を圧縮し圧縮進行波を生じる。圧縮進行波はトンネル内を音速で伝播するにつれ圧力勾配が切り立ち,トンネル出口に到達すると微気圧波騒音を発生させる。またトンネル内の器材坑(横穴)を列車が通過するときにできる圧力波が,トンネル坑口から放射されることで連続的な低周波騒音が発生する。これらの騒音はトンネル坑口周辺での居住空間の音環境を悪化させ住民に精神的な苦痛を与える。本研究ではこれらの騒音に対応可能なアクティブな消音装置の開発を目指している。これまでに,トンネル内で枝坑から正圧の制御波を発生させる本研究の消音手法は,ある程度の制御タイミングのずれや圧力不足があっても,消音制御の安定性が高いことを数値計算で明らかにし,トンネル模型を使った消音装置でその実証実験を行ってきた。平成16年度は,より実用化に近い研究に移行し,アクティブな微気圧波の消音システムの開発を目指した研究を行った。新幹線の先頭車両形状や突入速度,トンネル毎に異なる内部構造により,発生する圧縮進行波の先頭波形形状は一定ではない。そこで,発生した圧縮進行波の先頭波形に応じて,最適な制御波を発生させ微気圧波を消音することを目指し,任意の波形を持つ制御波を発生させるため2種類の手法を検討した。1つは制御波発生用サーボバルブ駆動曲線と発生した制御波圧力波形の間の伝達関数を実験により明らかにしてしまう手法である。もう1つは圧縮性流体理論から,タンク内圧力を大気圧の2倍以上の一定値に保つことで噴出する粒子速度をほぼ音速にチョークさせ,開口面積に比例した圧力を得る手法である。前者は,必要十分な精度で伝達関数を求めることができなかったが,後者については,良好な実験結果が得られ,タンク内圧力を十分高く設定すれば,効率よく開口面積に比例した制御波圧力が得られることを明らかにした。
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