研究概要 |
排水の生物処理システムにおける微生物生態系と浄化機能との間の関係を明らかにすることを目的とし、以下の研究を行った。浄化槽から単離し16SrRNAの配列を用いて同定した細菌(Bacilus cereus, Acinetobacter sp.等12種類)に対する繊毛虫類Tetrahymena thermophila(無菌株)、Colpidium sp.および後生動物輪虫類Philodina sp.の捕食実験を行い、これら捕食者の細菌に対する選好性が明らかとなった。この結果から適切な細菌(Serratia marcescens等)を選択し、原生動物と細菌、輪虫と細菌から構成された腐生食物連鎖のモデル微生物生態系(マイクロコズム)を構成し、個体群と有機態炭素(TOC,DOC)の動態解析を行った。また、分子生物学的手法として、T-RFLP法が浄化槽などの混合微生物系での細菌動態の解析に有用であることを示すことができた。これらの結果から、細菌単独の場合よりも、細菌捕食者としての原生動物や後生動物が存在する場合には、生菌数が減少するにもかかわらず、DOCとTOCの減少量が高くなること、また、溶存有機物を取り込むことができるT.thermophilaの場合でも、単独培養の細菌と単独培養のT.thermophilaのDOCの減少量の合計よりも、混合培養時のDOCの減少量が大きいことが判明した。一方、有機物-細菌-捕食者から構成された数理モデルの解析結果では、捕食により細菌数が減少するためDOCとTOCの減少速度は捕食により低下するという実験結果と逆の結果を得た。これらのことから、捕食効果により細菌1細胞あたりの有機物分解活性が高まることが示唆され、細菌捕食性生物は生活系排水の処理において、有機物除去と汚泥減量化に寄与し、処理水質の向上に極めて有効であるとの結論を得ることができた。
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