研究課題/領域番号 |
16510075
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中西 寛 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40237326)
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研究分担者 |
笠井 秀明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00177354)
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キーワード | 原子架橋 / 分子性架橋 / ナノ構造 / STM / 磁性 / 第一原理計算 / 量子化コンダクタンス |
研究概要 |
磁性原子ポイントコンタクト(原子架橋)として本年度は、架橋のくびれ構造を考慮した原子配置で、Cu(111)面間をFe1原子でコンタクトする系を取り上げ、密度汎関数理論を基にした第一原理計算を援用して、この系の磁性および、スピン偏極量子化コンダクタンスを調べた。 この系の磁性は、主にFeポイントコンタクト原子に局在化したスピンが支配的で、ストレス・フリーの状態から、架橋を引き伸していくと、徐々に磁気モーメントが増大する傾向がみられた。この傾向は、Homogeniousな原子構造をとる磁性原子架橋の場合と類似している。架橋圧縮に対しては、磁気モーメントは減少するが、特にこの系の特徴として徐々にその減少傾向は鈍化していくことが見出された。詳細に調べた結果、減少鈍化はFeポイントコンタクト原子に隣接するCu原子に誘起された磁気モーメントが起源であることが見出せた。Cu原子に誘起される磁気モーメントは、Feポイントコンタクト原子と同じ方向で、大きさは架橋圧縮操作に対してFeポイントコンタクト原子とは、逆に増加する。これにより系全体での磁気モーメントの減少は抑えられることがわかった。 ストレスフリーの状態およびその周辺では架橋を通しての電流は、Feポイントコンタクト原子に局在するスピンとは逆向きにスピン偏極することが見出された。そこから架橋圧縮および引き伸しを行うと、一端スピン偏極は消失する。引き伸ばし方向に関しては、そこからさらに引き伸ばすと、電流はFeポイントコンタクト原子に局在するスピンとは同方向にスピン偏極し、スピン偏極度は増大して行く。特に架橋がブレークする寸前で、スピン偏極度は、100%に達することを見出した。 これらの成果は、磁性原子架橋の機能デバイスとしての潜在的有用性を示すものと考えられる。
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