研究課題
超伝導体にトンネル接合を介して準粒子注入を行うと、すぐにはクーパー対に再結合せずに短時間、非平衡な準粒子として超伝導体に存在する。我々は、微細加工技術を取り入れた新たなる手法による研究を行い、非平衡超伝導に関して以下の事柄を明らかした。1.超伝導準粒子電荷が蓄積する電荷インバランス状態では、超伝導体に常伝導電極を持つトンネル接合を付加したときに余剰電流が期待されるが、この余剰電流の存在を接合の電圧電流特性測定で明らかに示した。超伝導・常伝導トンネル接合の場合、余剰電流の大きさは電圧バイアスに依存しないことが示された。これは、非平衡超伝導のトンネル電流の理論の直接検証である。2.異なるエネルギーギャップをもつ超伝導接合を非平衡超伝導体に接続し、余剰電流の電圧バイアス依存性を測定することにより、電荷インバランス状態のスペクトロスコピーをおこなった。余剰電流の電圧バイアス依存性を解析する事により、準粒子電荷のエネルギー分布を抽出したところ、注入された準粒子のエネルギー分布を反映した構造を有していることがわかった。これは、エネルギー緩和と電荷インバランスの緩和時間がほぼ同じ程度であるという理論的予測を支持する。3.準粒子が超伝導体に存在しているとき、超伝導・超伝導接合ではジョセフソン効果を示すクーパー対トンネルの他に準粒子トンネルが同時に起こる。準粒子トンネルの存在は、ジョセフソン接合の特性を大きく変化させることに注目し、準粒子注入の下でのジョセフソン接合の特性の制御に成功した。I-V特性にヒステリシスを示していたジョセフソン接合では、準粒子注入電流の大きさが増えるにつれて、ヒステリシスの度合いが小さくなるのが観測され、あるところでヒステリシスが消失することが観測された。これは、ジョセフソン接合の特性を接合を形成した後に変えることができる点で機能素子への応用が期待できる。
すべて 2006
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