今年度は、当初計画に従い、初年度に立ち上げた装置を用いて、多種の吸着システムに関した実験を試み、データの蓄積を図ると共に、現有設備、特に測定機器の精度不足を補う方策を検討した。さらに、得られたデータを基に回転運動ポテンシャルを詳細に解析し、表面吸着分子の配向を外部操作により制御する方策について検討を行った。 (1)データの蓄積 昨年度から開始したケイ素(Si)クラスターの観測に関し、炭化水素燃焼過程の中間体であるCCHラジカルが吸着したSiCCHの観測に成功した。また、従来より観測経験のあったアルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)のクラスターの回転運動ポテンシャルに関し、さらに詳細な情報が得られた。 (2)測定機器精度の改善 実験装置に新たな高性能ゲート型積分器を導入し、測定精度の向上が図られた。新規積分器は、従来設備に比べ、周波数帯域が広く、高い時間分解能を有するため、クラスターからの高速な信号の確実な計測が可能となった。 (3)回転運動ポテンシャルの決定と吸着分子配向制御の検討 昨年度観測に成功したSiCNおよびSiNCというケイ素にシアノラジカル(CN)が吸着したクラスターは、吸着分子の回転運動が極めて複雑であることが判明した。一方、AlやMgのクラスターに関しては、実験結果から回転ポテンシャルを決定でき、このポテンシャルが表面金属より吸着分子の違いにより、著しく異なることが明らかとなった。例えば、MgにOHが吸着したクラスターでは、回転ポテンシャルは主成分が4次の非調和項であるのに対し、CNが吸着したクラスターでは、MgNC⇔MgCNの異性化反応ポテンシャル障壁が低く、回転ポテンシャルは三角関数型で良く記述されることがわかった。 (補足)上記のMgに関する研究成果は、平成18年日本化学会第86回春季年会、および、61^<th> Columbus Meetingにて発表予定である。また、現在、MgおよびSiに関する研究成果の論文発表を進めている。
|