研究概要 |
グルタチオン(GSH)によって保護された金クラスター(Au:SGクラスター)を湿式法によって調製し,ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって9種類の成分に分画した.分画したAu:SGクラスターの化学組成をエレクトロスプレーイオン化質量分析法を用いて調べたところ,以下の組成をもつクラスターのみが含まれていることがわかった.すなわち,我々はAu_<10>(SG)_<10>,Au_<15>(SG)_<13>,Au_<18>(SG)_<14>,Au_<22>(SG)_<16>,Au_<22>(SG)_<17>,Au_<25>(SG)_<18>,Au_<29>(SG)_<20>,Au_<33>(SG)_<22>,Au_<39>(SG)_<24>の単離に成功した.これらサブナノメートルサイズの金クラスターをコアとする複合体の電子状態を,X線光電子分光・光学吸収分光を用いて系統的に追跡した.その結果,コアとチオールの界面では部分的な電子移動が起こっていること,およびこれら一連の魔法数クラスターの電子状態は離散化されていることが明らかになった.さらに,DFT計算の結果をもとに,吸収スペクトルの立ち上がり付近で観測されたピーク構造を金クラスターのspバンド内の光学遷移と帰属した.このバンド内遷移のエネルギーとクラスターサイズの関係から,チオラート金(I)単核錯体とチオラート保護金ナノ粒子の中間領域での電子構造の挙動を明らかにした.また,我々が単離したクラスターは離散的な電子構造をもつことから,フォトルミネッセンス(量子収率10^<-4>〜10^<-3>程度)を示した.現在,蛍光寿命の測定や発光エネルギーのサイズ依存性の解明などを進めている.
|