研究概要 |
様々なチオールで保護した金クラスターを系統的に合成し,その組成を質量分析法を用いて決定した.さらに,得られたクラスターの電子・幾何構造を各種分光法によって追跡し,組成との相関を調べた.以下の点が明らかになった. 1)チオールの骨格によって単離される金クラスターのサイズ系列が異なることを初めて見出した.これは速度論的な安定化によって得られるクラスターサイズが異なることを表している. 2)過剰なチオールによるエッチング反応に対する安定性を調べたところ,25,38,55量体などの金クラスターが安定であることがわかった.粉末X線回折実験や理論計算によって,これらのクラスターの特異的安定性は表面がファセットで構成されたfcc結晶であることによるものであると結論した. 3)X線円二色性分光によってチオール保護金クラスターが磁性を発現することを見出した.硫黄との結合によって金の5d電子が配位子側に移動することが磁性の起源であること示唆している. 4)デンドリマー保護金クラスターでは発光エネルギーがサイズに顕著に依存するのに対して,チオール保護系では顕著なサイズ依存性が観測されなかった.この結果はクラスターのサイズだけでなく表面修飾状態が発光特性を決定づけることを表している.
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