研究概要 |
我々は電気泳動法により、制御が容易で再現性がよく、しかも様々な金属チップと付着しやすいCNTストリングの作製プロセスの開発に成功したが、プロセスの詳しい制御パラメーター及び成長機構はまだ明らかにされていない。本研究では、反応機構を解明し、プロセスを完全に制御することを目指す。これらの結果により、電子放出源としての応用、STM及びAFMプローブの作製・応用を試みた。 今年度の実績として、 1)電気泳動法によるカーボンナノチューブチップを用いて高分解能を持つ原子間力走査型顕微鏡(AFM)用探針を製作することに成功した。簡単な電気泳動法を用いて室温でほぼ100%の確率で長さ・角度が制御できるカーボンナノチューブプローブが作製できた。新しいナノ構造の作製・解析を行うための手法を提供することができ、実用化として、ナノ分析デバイス実現に向けての研究開発を進めるとともに生物医療分野での応用展開を目指す。この研究の成果は、Nano Letter vol.15,で発表された。また、米国特許の出願番号を受け取った。プレス発表も行われ、新聞4紙に記事として取り上げられた。 今回成功したナノチューブの制御は、(1)特殊な環境が不要、(2)再現性が極めて高い、(3)配向性が高い、(4)形状制御が容易、(5)同時に多数のプローブ作製が可能という多くの特徴を持っている。これらの特徴により、必要に応じて様々な金属・ナノチューブプローブを作ることが可能であることから、大量生産に向く技術として有望である。 2)また、最近、われわれは世界で初めて、化学気相堆積(CVD)法を用いた希土類ホウ化物(LaB_6,CeB_6,GdB_6,YB_<12>)単結晶ナノワイヤの作製に成功した。これらのホウ化物ナノワイヤは、先端の直径が数十nmで長さは数μmで、電界放射型陰極として非常に有望である。また、電界放射型陰極という興味以外にも、CeB_6、GdB_6は磁性物質であり、YB_<12>は超伝導物質であることから、これらのナノワイヤ材料は一次元物質の物性や超伝導性に関しても深い興味がもたれる。これらの研究成果はAdvanced Materials、Journal of American Chemical Societyなど雑誌に掲載された。
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