研究概要 |
我々は電気泳動法により、制御が容易で再現性がよく、しかも様々な金属チップと付着しやすいCNTストリングの作製プロセスの開発に成功したが、プロセスの詳しい制御パラメーター及び成長機構はまだ明らかにされていない。本研究では、反応機構を解明し、プロセスを完全に制御することを目指す。これらの結果により、電子放出源としての応用、STM及びAFMプローブの作製・応用を試みた。 今年度の実績として、 1)電気泳動法による長繊維化カーボンナノチューブチップを製作することに成功した。この電気泳動法で作られた長繊維化CNTバンドル(bundles)は金属針の軸方向に揃っており、小角度での付着が可能である。また、CNTバンドルの表面が円滑であり、直径が均一であるが、エンド部は単一なバンドルである。溶液の濃度、金属針のシャープさ、電場の強さなど実験条件を調整すると、長さと直径が制御されたCNTのバンドルの作製ができる。例えば、直径が30nm、長さは1μmのものはSTM探針として使用でき、高分解能の画像がえられる。それにより、軽量・高強度・導電性カーボンナノチューブ・ポリマー複合材料の作製や生物用電極の作製を進めているが、微小な長繊維化CNTの糸の力学測定法の確立が必要である。普段使われている顕微力学測定法はCNT糸の測定に対して、試料のサイズが小さすぎて使いにくい。それで、原子間力プローブ顕微鏡を用いて、長繊維化CNTバンドルのヤング率の測定を確立した。 2)また、最近、われわれは世界で初めて、化学気相堆積(CVD)法を用いた希土類ホウ化物(LaB_6,CeB_6,GdB_6,YB_<12>)単結晶ナノワイヤの作製に成功した。これらのホウ化物ナノワイヤは、先端の直径が数十nmで長さは数μmで、電界放射型陰極として非常に有望である。これらの研究成果はAdvanced Materials、Journal of American Chemical Societyなど雑誌に掲載された。我々は様々な金属溶媒を用いて、シリコン、グラファイト、W、Moの基板の上にLaB_6単結晶ナノワイヤの大量生成に成功した。ナノ熱放出電子源や電界放出電子源の開発が期待される。
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