各種汎用プラスチック材料と金型材料、及び、形状の異なる金型において、成形工程における金型表面の汚染状態と成形品外観におよぼす成形条件の影響を実体顕微鏡、SEM観察そしてFT-IRによって分析を行い、金型汚染の要因と離型性に影響をおよぼす因子について解析した。 プラスチック射出成形には、プラスチック材料として、ポリアセタール(POM)、ナイロン66(PA)を使用し、成形ショット数ごと脱着式平板金型の表面を顕微鏡またはSEMによって観察した。プラスチック射出成形は、油圧式射出成形機を使用し、成形時間、冷却時間など所定の条件で成形した。平板金型表面の汚染物質及びプラスチックのFT-IR分析を行った。 成形ショット数を増加させると金型汚染のデポジットは、最終充填部およびウエルド部に付着しやすいということが確認された。この汚染物質は、樹脂の熱分解したガス、あるいは、低分子量の樹脂であると考えられる。射出成形において室内の温度を12℃と20℃で成形時を行った時の金型の汚染状態を観察した結果、試験室内の温度が12℃で成形を行った方がゲートと反対部分の汚染が増加した。これは、室温が低い場合、成形中の型開閉時に金型表面温度の低下が著しく、そのため、射出時に発生したガスの冷却固化が促進され、室温が高い環境での成形より、ガスが金型外へ放出しにくくなったため汚染が増大したと考えられる。POM成形とPA成形後に付着した金型表面の汚染物とその原料のFT-IRを測定した結果、POM成形では汚染物が原料樹脂であるPOMと同じ化学構造であり、PA成形では熱分解した物質であることがわかった。
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