光学素子プラスチック及びそれを成形するための金型は高精度化が進んでいる。サブメートルから数十マイクロメートルの構造をもつ微細パターン金型を製造することによって、非球面レンズそしてフレネルレンズなど高性能光学レンズの生産が可能となってきている。一方、微細パターン光学製品製造時に金型の劣化・汚染による製品の外観、寸法、表面の荒れなどが発生し、高性能微細レンズの生産ができないのが現状である。この対策として、汚染金型の早期交換、金型の洗浄、離型剤の塗布などを行っているが、金型汚染を防ぐことは難しいと考えられている。本研究では、微細パターン高性能レンズ成形時における金型汚染の原因を解明し、微細パターン高性能レンズ製造の研究を行った。微細パターン高性能レンズ成型時の金型汚染の原因を解明するためには、まず金型汚染状態と汚染物質の分析、同定を行う必要があり、汚染の度合および汚染物質を明確にすることが第一の課題であった。そして、金型の極性をコントロールするトリアジンジチオール誘導体すなわち離型に適応した化合物を合成し、それにより金型を表面処理する条件を検討し、微細パターン高性能レンズ成形製造時の金型離型性の改善、金型汚染防止を行った。フッ素含有トリアジンチオールで有機めっき処理した金属表面の水とヨウ化メチレンに対する静的接触角は有機めっき処理時間の増加とともに増大し、水および油に対して撥水撥油性を示した。このフッ素含有トリアジンチオール皮膜は表面自由エネルギーとXPSの結果より、末端の-CF3の一部が表面に配向することを明らかにした。フッ素含有トリアジンチオールで有機めっき処理した金型と樹脂との剥離強度は低下し、易離型性であることが明らかにした。フッ素含有トリアジンチオールで有機めっき処理微細パターン金型の開発により高性能微細パターン光学プラスチック成形品の製造工程の方向性を確立することができた。
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