研究概要 |
【目的】超好熱アーキアから見出された色素依存性L-プロリン脱水素酵素(L-ProDH)は、四種類のサブユニットから成る。本酵素は、L-プロリンを基質としてこれを酸化する反応を触媒する。このとき、2,6-dichroloindophenolといった人工色素などを電子受容体として電極基盤上で反応が進行するが、この電子伝達には一定の方向性を有していることが解っている。本研究では、L-ProDHを電極上にある一定の方向に制御して配向固定することでメディエータを介した電子伝達について電気化学的な応答と配向との相関や、タンパク質のコンフォメーションについての検討を行った。 【方法】FAD、Feを含むサブユニットのN末端にHis-tagを導入したL-ProDHプラスミドを構築し大腸菌に発現させた。次に、His-tagタンパクを特異的に固定化させるニトリロ三酢酸(NTA)固定化法を用いて金電極上にカルボキシル基の導入、活性化を行った。次いでNTA、Niを固定化し、最後にHis-tagタンパクをNTA修飾金電極上に固定化した。 【結果】His-tagを付加させたL-ProDH(His-α,His-γ)を固定化したNTA-Ni電極を作用極としサイクリックボルタンメトリー解析を行ったところ、両者ともに基質およびメディエータ存在下にて酸化波の増大が見られた。また、このときコントロールとしてHis-tagが付加されていないL-ProDHを浸漬させたNTA金電極を用いて同様に測定したところ全く応答を示さなかった。次に印加電圧を+0.45Vとして基質に対する電流応答を測定したところ、His-α L-ProDHを配向固定した電極の方が高い応答を示すことが解った。αsubunitが電極側に位置していると基質であるL-Prolineとの触媒部位を有するβ subunitが、バルクに位置するため、酵素反応の進行がより効率的であると推察される。また電子のスムーズな流れが形成されるものと考えられる。
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