研究概要 |
チタンテトライソプロポキシドを1,4-ブタンジオール中に入れ、オートクレーブ中で加熱処理することで、表面にグリコキシドを持つアナタース構造のチタニアナノ結晶が得られた。この生成物はヘキサンなど疎水性溶媒中には分散しないが、メタノールや水など親水性溶媒には容易に分散した。分散後、風乾させた試料は、表面有機種と分散媒との相互作用のため凝集し、ナノ粒子の間隙の大きさに相当する10nm程度のメソ孔を持つ生成物となった。一方、1,4-ブタンジオールの代わりに直鎖1級アルコールを用いて合成した試料では、表面にアルコキシドを有する生成物が得られた。この生成物は、親水性溶媒には分散しないが、疎水性溶媒中によく分散し、グリコール中で合成した試料とは全く逆の特性を示した。 チタンテトライソプロポキシドに少量のオルソケイ酸エチルを加え、1,4-ブタンジオール中でオートクレーブした場合では、アナタース構造を持つシリカ修飾チタニアのナノ結晶が得られた。シリカ修飾をしていないチタニアでは、高温で焼成することで、ルチルへの相転位が起こり、表面積が大きく減少するが、シリカ修飾チタニアは800℃で焼成後もアナタース相を維持し、優れた熱安定性を示した。この試料のXPSおよびXANES測定結果から、Siは主としてアナタース構造の空きサイトに侵入型で取り込まれていることが示された。Siの導入はバルク内の物質拡散を抑制し、また、Si原子の侵入による電荷のバランスを補償するため表面水酸基濃度が低下し、表面を安定化する。シリカ修飾チタニアではこれらの寄与により熱安定性が向上したものと考えられる。
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