研究概要 |
本研究は,ナノ構造シリコン材料(ポーラスシリコン)に直線偏光を照射することで光学異方性を誘起し,その異方性発現のメカニズムを解明するとともに機能性デバイスへの応用を図ることを目的としている.本年度は主として試料製作技術の改良と材料の基礎特性評価を中心に行い,以下に示すような成果が得られた. 1.新たなパッシベーション手法の開発 従来の電気化学的陽極酸化法に比べ試料依存性が小さく,また酸化に伴う異方性の低下を抑制することができる方法として,温水浸漬法が有効であることを見出した.50℃の温水に数分間浸すだけで,従来法と同程度の安定性を得ることができた. 2.試料作製ならびに実験に関する基礎技術の確立 0.1%までの低濃度のフッ化水素酸を使用して試料の作製を行い,陽極化成電流密度依存性の測定のための基礎データ(臨界電流密度など)を収集した.また,電解質溶液接触によるエレクトロルミネッセンスの実験に向けて,使用する溶液組織の検討を行い,最適pH値などのデータを得た. 3.光学異方性の評価-励起波長依存性- 光学(発光)異方性の評価を数種類の異なる励起波長のもとで行った.長波長の励起光を使用すると酸化物の発光の影響をより多く受けるため,異方性の評価には短波長での励起が適していることがわかった. 4.光学異方性の試料作製条件依存性 陽極化成電流密度依存性について調べた.低電流密度で作製した試料には光学異方性は現れず,光学異方性が陽極化成電流密度に大きく依存することが明らかにされた. 5.屈折率異方性の評価 発光スペクトルの干渉波形から,屈折率異方性の定量的評価を行った.
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