昨年度までの研究により、水中レーザーアブレーションによって作製した銀コロイドに対するレーザー光照射によってワイヤーやシートの他にプリズムやロッドが生成することが明らかになった。今年度はこれらの現象の機構を明らかにし、レーザー光照射による銀ナノ粒子の異方性構造制御を効率よく行う指針を得ることを目的とした。 (1)ワイヤー生成に対するイオンの影響の検討:銀ナノワイヤーが生成する現象における最大の疑問点は、光によって溶融したナノ粒子が融合する際にどのような機構によって一次元のワイヤー状に連結するのか、という点である。そで今回はイオンによるナノ粒子の凝集効果の影響を検討した。NaClを数mM以下の濃度で加えた銀コロイド溶液にワイヤーが生成する条件でレーザー光の照射を行ったところ、ワイヤーやシートに類似した異方性構造体の生成量が増加することが確かめられた。一方、予想外の現象として、NaClの添加によってロッドの生成も誘起されることが見出された。 (2)プリズム、ロッド生成に対するイオンの影響の検討:上記の結果から、イオンを添加したコロイド溶液にプリズムやロッドが生成する条件でレーザー光の照射を行ったところ、これらの生成量が増加することが分かった。さらに、イオンを添加したコロイド溶液では、蛍光灯の光によってもプリズムやロッドの生成が誘起されることが明らかにし、これまで現象は報告されていたものの機構や再現性が明らかではなかったこの現象に対して、大きな指針を与える結果を提示した。
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